始業後の行動が労働時間に当たるか

例えば、次のようなケースです。

行動 労働時間に該当するか
9時を過ぎても通勤・移動をしている 原則として労働時間ではなく、遅刻に当たる
出社後に私服から別の私服へ着替える、私物を整理する 原則として労働時間に当たらない
業務上義務付けられた制服や保護具に着替える 労働時間に該当する場合がある
業務用PCや業務システムを起動・ログインする 業務上必要な作業であれば、労働時間に該当する可能性が高い
コーヒーを淹れる、朝食を取る 原則として労働時間に当たらない

労働時間に該当するかどうかは、単に会社にいるかどうかではなく、使用者の指揮命令下に置かれているかによって判断されます。9時に出社してから業務用PCを起動し、必要なシステムにログインしているのであれば、それも業務上必要な準備として労働時間に含まれる可能性があります。一方で、9時に出社してから朝食を取ったり、私物を整理したりしているのであれば、事情は異なります。

つまり、9時に出社したこと自体が問題なのではなく、9時以降に何をしているのかが問題ということです。

始業前の準備を無給で強制することはできない

本来は始業前に済ませておいてほしいと会社が考える準備であっても、それが業務上必要な作業であれば、無給で始業前に行うよう強制することはできません。どうしても9時ぴったりに業務上必要な準備を終えた状態で仕事を始めてほしいのであれば、始業時刻を前倒しするなど、所定労働時間の見直しを検討する必要があります。あるいは、始業前の準備を時間外労働として扱い、必要な賃金を支払う方法もあります。

ただし、始業時刻の変更には労働契約や就業規則との関係を確認する必要があり、時間外労働についても法令上の手続きや割増賃金の要否を確認しなければなりません。

終業時も同じ考え方で判断する

業務上必要な片付けや後処理は、労働時間に含まれる場合があります。一方で、終業時刻より前に自己判断で業務を切り上げ、私的な帰宅準備を済ませて、あとは退勤時刻を待つだけという状態は、やや話が異なります。終業時刻までは会社の指揮命令下にあるため、従業員が自己判断で業務を終了してよいわけではありません。

もちろん、会社の指示に従って待機している時間は労働時間に当たります。しかし、業務が残っているにもかかわらず、退勤を急ぎたいという理由で勝手に仕事を切り上げているのであれば、改善を促すことは問題ないと考えられます。始業・終業のいずれについても、業務上必要な準備や片付けと、私的な準備や片付けを区別し、ルールを定めておくことが重要です。

始業時刻に間に合わない遅刻が繰り返される場合の対応は遅刻・欠勤が多い従業員で整理しています。

確認ポイント

  • 始業時刻以降、従業員が何をしているのか確認する
  • 業務上必要な準備と私的な準備を区別しているか
  • PCの起動やシステムへのログインなどを労働時間として扱っているか
  • 始業前の準備を無給で行うよう求めていないか
  • 終業時の片付けや後処理についても同じ基準で判断しているか
  • 始業・終業時刻の運用について社内で認識を統一しているか

こんなケース、どうする?

9時始業なのに、9時に出社してPCを起動している。

業務用PCの起動やログインが業務に必要な作業であれば、その時間も労働時間に含まれる可能性があります。9時までにログインを完了するよう求めるのであれば、そのために必要な準備時間を労働時間として扱う必要があります。

9時に出社してから朝食を取っている。

朝食を取ることは通常、業務上必要な準備ではありません。9時が始業時刻であれば、原則としてその時刻から業務に従事する必要があります。始業後に私的な行動を続けている場合には、勤務ルールに従って改善を求めることができます。

始業10分前には出社するよう指示してよい?

出社を促すこと自体と、業務を義務付けることは分けて考える必要があります。始業10分前から準備作業や朝礼などを義務付けるのであれば、その時間は労働時間に該当する可能性が高くなります。単に「余裕を持って出社してほしい」という呼びかけであっても、実質的に早出を強制する運用になっていないか注意が必要です。

終業時刻の10分前から帰宅準備をしている。

業務上必要な片付けであれば、労働時間に含まれる場合があります。一方で、私物をまとめるなどの私的な帰宅準備を理由に、終業時刻前に業務を切り上げているのであれば、勤務態度として改善を求めることが考えられます。ただし、業務がなく会社の指示で待機している時間は、労働時間として扱います。